1型糖尿病
1型糖尿病とは
1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が破壊されることによってインスリンの分泌が滞り、血液中のブドウ糖濃度が高まるために常に高血糖状態になる疾患です。
加齢によって免疫機能が低下してしまうため、若いうちに発症してしまうと、インスリンが分泌されなくなるまでの時間が短いです。逆に、中高年で発症するとインスリンが分泌されなくなるまでに時間がかかります。
1型糖尿病患者は全国で21万人ほどいるとされており、決して少なくはありません。
1型糖尿病の原因
1型糖尿病の原因は、インスリンを分泌するための膵臓にあるβ細胞が破壊されてしまうことにあります。β細胞が破壊される理由について確かなことは未だ不明ではあるものの、免疫機能が異常を起こすことで、重要な細胞であるβ細胞を攻撃してしまうためと考えられています。
自己免疫異常は、合併症として甲状腺疾患を引き起こす要因でもあり、橋本病やバセドウ病が発症することもあります。2型糖尿病とは根本的な原因が違うため、生活習慣は関係ありません。
1型糖尿病の種類
一口に1型糖尿病とは言っても、進行具合によっていくつかの種類に分類されます。
劇症1型糖尿病
劇症1型糖尿病は、急に発症する糖尿病です。発症してから1週間以内にインスリンの補充をしなくては、糖尿病急性合併症(糖尿病ケトアシドーシス)に進行し、重篤な状態へと至ります。HbA1cは過去1〜2ヶ月の平均的な血糖値が反映されるため低く出てしまうものの、血糖値自体は高めになります。血液検査での判定は、自己抗体陰性と出ることがほとんどです。
急性発症1型糖尿病
劇症ほど急激にインスリンが必要となるわけではありませんが、発症から数ヶ月でインスリンが必要となります。1型糖尿病の多くがこの急性発症1型糖尿病にあたり、血液検査では自己抗体陽性と出ます。発症してもわずかな期間ではありますが、血糖値が改善する場合があります。原因は体内に残ったインスリンが仕事をしているからであり、新たに作り出されないために結局は人為的に補充が必要です。
緩徐進行1型糖尿病
緩徐進行1型糖尿病は、インスリンが必要になるのは発症後半年〜数年と猶予があります。2型糖尿病と似ているため、血液検査でどちらなのかを調べる必要があります。ただし、症状が進行していて自己抗体が消えてしまっていると判定が難しくなってしまいます。
1型糖尿病の症状
1型糖尿病の症状としては、上記のものが挙げられます。
糖尿病の場合は、インスリンの不足により症状が一気に悪化し、ケトーシスやケトアシドーシスになることで昏睡状態や最悪の場合、死に至るケースもあります。
治療方法
1型糖尿病では、一般的にはインスリン療法を行います。必要に応じて食事療法や運動療法も組み合わせた治療を実施します。
薬物療法
インスリンには、生命維持のためのものと血糖上昇をさせないためのものがあります。生命維持に欠かせない基礎インスリンは毎日1〜2回程度注射し、血糖上昇を予防するための追加インスリンは毎食前に注射します。注射は自己注射が可能であり、当院ではやり方や注意点について丁寧にご説明します。その他、患者様の状態によっては血糖値の上昇を抑えるための内服薬を処方することもあります。
食事療法
1型糖尿病になると、インスリン不足のために体重が減少することもあります。なぜなら、食事は発症前と変わらなくても、栄養をうまく吸収できないからです。体重が減少しても薬物療法によって体重を増加させることができますが、場合によっては増えすぎてしまうこともあります。そうなった場合は、食事でコントロールする必要があります。
運動療法
運動で糖の消費を促進させ、なお且つ筋肉量を増加させることが重要です。筋肉量の増加と脂肪減少によって、インスリンの効き目をより高めることができるからです。運動に関しては、年齢や経験、これまでの日々の運動量などを考慮し、無理のない範囲で適切な運動ができるように設定します。
2型糖尿病
2型糖尿病とは
2型糖尿病の主な原因は、食習慣や運動などの生活習慣です。生活習慣が乱れてしまい、偏った食事や運動不足、睡眠不足、ストレスなどでインスリンが少なくなったり、働きが悪くなったりした際に発症してしまいます。
国内で糖尿病の疑いがある、もしくは糖尿病を発症しているという方は約1,000万人にも上ります。肥満の方に発症が多いのは確かですが、普通体型であってもインスリンの感受性が低ければ発症することがあります。その他、中高年に発症することの多い2型糖尿病ですが、最近は若い世代でも発症するケースもあります。
2型糖尿病の原因
2型糖尿病は、運動不足や睡眠不足、カロリーや脂肪が多い食事、食物繊維の不足、ストレス、喫煙等が原因とされています。また、生活習慣の乱れが全てというわけではなく、インスリンが分泌されにくい遺伝による体質や加齢も、発症のリスクを高めるとされています。
治療方法
2型糖尿病を治療するためには、生活習慣の改善が重要です。特に食事は、血糖値をコントロールするためにしっかり管理しなければなりません。その他、定期的な運動を習慣づけるようにしましょう。それでも血糖のコントロールが不十分な場合は、内服薬を併用します。
食事療法
2型糖尿病を改善するための食事療法としては、高カロリー・高脂肪の食事を控えて、早食いや過食、アルコールの過剰摂取は避けるようにしましょう。多く摂取すべきなのは食物繊維ですが、無理やり大量に食べる必要はありません。食べてはいけないものがあるわけではないため、無理のない範囲でバランスの取れた食事を心掛けてください。
運動療法
運動で筋肉を増やしたり脂肪を燃焼させることによって、インスリンがよく効くようにできます。運動は糖の消費も促進できるため、定期的に無理のない運動を心掛けるようにしてください。ちょっとしたウォーキングやゆるいジョギング程度でも問題はありません。軽く有酸素運動をするだけで大きく違うため、お身体の状態と相談しながら少しずつ試していきましょう。
薬物療法
糖尿病には薬物療法が有効であり、血糖値を下げるための内服薬の他に、自分自身でインスリンを注射することができます。その他、インスリンポンプ治療などもできるため、症状に合った薬物療法を行います。動脈硬化症が認められる方には、糖尿病の薬の他にGLP-1受容体作動薬の注射を行う場合もあります。
妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠
妊娠糖尿病とは
妊娠糖尿病とは「今まで糖尿病にはなったことがなく、糖の異常も指摘されたことがない」という方で、妊娠して初めて糖の異常を指摘されるケースです。
妊娠された方の1割以上に該当し、糖の代謝異常は軽度ではありますが、母体だけでなく胎児への悪影響も考えられます。
また、妊娠糖尿病になった方は、出産後もそのまま糖尿病になってしまう場合があります。妊娠糖尿病には、妊娠前に糖尿病だった方や妊娠中に明らかな糖尿病となった方は含まれていません。
妊娠糖尿病の原因
妊娠糖尿病ではなくても、妊娠することによって、血糖値が上がりやすくなるのは一般的なことです。様々なホルモンが胎盤から分泌されることによって、インスリンの分泌量が不足するだけでなく、働きも低下します。血糖値も上がっていることも加わって、軽度の糖代謝異常が起こります。さらに胎盤が出す酵素が、母体が分泌するホルモンを分解してしまいます。その他、2親等以内に2型糖尿病の既往症がある場合は、遺伝的に糖尿病になりやすくなると考えられています。年齢的なものもあり、35歳以上で妊娠した場合も妊娠糖尿病を発症しやすく、肥満体型だったり大きな赤ちゃんを産んだりした場合、妊娠高血圧症候群になったことがある場合、流産や早産・死産の経験がある場合等も注意が必要です。
妊娠糖尿病が起こす合併症
お母さんに起こる合併症
- 腎症
- 網膜症
- 妊娠高血圧症候群
- 肩甲難産
- 羊水量の異常 など
お腹の赤ちゃんに起こる合併症
- 胎児死亡
- 流産
- 形態異常
- 心臓肥大
- 低血糖
- 黄疸
- 巨大児
- 電解質異常
- 多血症
- 将来的な肥満、メタボリックシンドローム など
診断方法
糖負荷試験において、以下のいずれか1つ以上に該当した場合、妊娠糖尿病と診断されます。
- 空腹時血糖92mg/dl以上
- 1時間後の血糖値180mg/dl以上
- 2時間後の血糖値153/dl以上
ただし、妊娠したばかりで検査をした場合に陰性であっても、妊娠中期で再検査をした場合に妊娠糖尿病と診断されることもあるため、気をつける必要があります。
治療
妊娠糖尿病の治療に関しては、主に食事療法と薬物治療が一般的です。
食事療法
食事はバランス良く、胎児がいるため多めに摂取しなければなりません。妊娠が後期になると、「分割食」で血糖コントロールを行うことができるケースもあるため、栄養士と相談して、必要であれば1回の食事を分割して食べるようにしましょう。
薬物療法(インスリン療法)
食事療法でしっかり血糖コントロールができる場合は問題ありませんが、難しいなら薬物療法でインスリンの投与を行う必要があります。ただし、2型糖尿病などで使用する血糖値を下げる薬は、胎児に影響を与えることが懸念されるため使用できません。インスリンであれば胎盤・退治に影響がないため、問題なく使用できます。空腹時血糖値100mg/dl以下、食後1時間の血糖値140mg/dl以下、食後2時間の血糖値120mg/dl以下が目標値となります。
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