糖尿病専門医がお勧めする運動療法|大阪市北区天神橋の「佐藤内科クリニック」

糖尿病専門医が解説する運動療法

血糖値に対する運動の効果について

ウォーキング有酸素運動をすると、ブドウ糖を吸収しやすくなります。また、血の流れが良くなり、インスリンがそれまでよりもよく効くようになるため、血糖値を下げることができます。トレーニングマシンを使用するときに筋力トレーニングも行うことで、筋力量を増やすことができればインスリンの効き目をさらに上げることができます。
ただし、あまりに激しい運動をしてしまうと、心臓や腎臓などといった臓器に負担をかけてしまって良くありません。また、激しい運動は体調を崩したりケガをしたりといった可能性もあるためお勧めできません。運動を習慣づけてもケガで長期間動けなくなってしまっては意味がないからです。
他にも、糖尿病で血糖値の上昇を抑えるために運動を行うのに、負荷がかかりすぎるとアドレナリンやカテコラミンなどといった血糖値を上げてしまうホルモンが分泌されやすくなるため、逆効果になってしまいます。運動を習慣づけたいときには、医師の指導の下、適切な量を行うようにしましょう。

どのような運動が効果的なのか

運動をするときには、有酸素運動に筋力トレーニングを組み合わせて、適切に行うことが大切です。

有酸素運動

有酸素運動とは、ウォーキングや緩めのジョギング、水泳などといった運動になります。息が切れるほど一気に動くのではなく、ゆっくりとした呼吸で全身の筋肉を動かすことが大切です。長時間行うのではなく、12030分程度、12回ほど行うと良いでしょう。
無理に歩かなくても、買い物や通勤などで歩いた時間をウォーキングに入れても大丈夫です。ただし、糖尿病だと発症しやすい心臓疾患や高血圧、肥満などといった合併症を発症している場合には、運動を習慣づける前に医師にご相談ください。体に無理のない程度に、運動に適切な時間や頻度を設定することが重要です。

ウォーキング

ウォーキングをするときには、腕を意識して大きく振り、背筋は伸ばしてください。足を踏み出すときには大股で、かかとから着地します。糖尿病の運動療法では、やや早めに歩くことで、少しきついかもしれませんが適度な運動になります。水分補給用に、飲み物はお茶か水を持ち歩くようにしましょう。

筋力トレーニング

糖尿病には、筋力トレーニングもお勧めです。腰や背中、足にある大きな筋肉を動かすことを目的としたトレーニングをします。毎日する必要はなく、週23回程度、1020×23セット行います。ご高齢の方やあまり運動が得意でない方にもできるように、医師が自宅で行えるメニューを個別にご提案します。

ふくらはぎのトレーニング

ふくらはぎのトレーニングをするには、両手を壁について両足のかかとを上げたり下げたりします。手は家具など動くものではなく、必ず壁について体を安定させてください。

運動のポイント

運動は、以下でご紹介する頻度や時間、時間帯を目安として行いましょう。ただし、あくまでも目安であるため、合併症があったり普段運動をしていなかったりという方は、医師と相談の上で決めてください。

強度(負荷)

運動の負荷は、「ややきつい」と感じる程度が良いです。
糖尿病治療での運動療法の場合、目安にする脈拍数(回/分)は【(220-年齢)×0.5】で算出可能です。算出された数字を目安にしてください。

(例)50歳の方の場合

目安にする脈拍数(回/分)=【(22050×0.5】=85回/分

頻度と時間

毎日行うことが理想ではあるものの、患者様によってはルールが厳しければモチベーションが下がってしまうこともあるため、医師と相談しながらメニューを決めます。
目安としては、2060/1回を1週間で150分以上の運動がお勧めです。

時間帯

基本的に、運動をするのはいつでも時間の空いた時で構いません。ただ、食後の血糖値の上昇を抑えるために、食後12時間の間に行うのがお勧めです。

歩数計を活用しましょう

歩数計を活用することで、11万歩を目指して頑張りましょう。歩数計はわざわざ購入しなくても、スマホアプリなどを活用することもできます。

運動で気をつけること

運動療法と食事療法はどちらも行う必要があります

運動療法と食事療法は、どちらかが欠けしまうと治療の効果が減少してしまうため、どちらも適切に行うことが重要です。また、運動のし過ぎで空腹になり、偏った食事をしてしまっても意味がないため、運動療法をするときには食事にも十分注意しましょう。

低血糖にならないように配慮しましょう

糖尿病薬を使用する際には、特に低血糖にならないように気をつけなくてはなりません。主にインスリンSU薬などの薬を使用することで、副作用として低血糖になりやすくなります。低血糖時には、脱力感、めまい、冷や汗、動悸、ふるえ、意識低下などの症状が現れ、放置しておくと命の危険もあるため、必ずブドウ糖を持ち歩くようにしてください。
運動するときには軽食やブドウ糖を準備しておき、低血糖にならないように配慮しましょう。

脱水症状にならないように、十分に水分補給をしましょう

運動時には適度に水分を補給することで、脱水症状にならないようにしましょう。運動を始めるまえに、水分を補給できるように飲み物を用意しておいてください。

準備体操・クールダウンで身体の負担を軽減させましょう

運動前に準備体操をしておくことで、運動しても筋肉を傷めないようにできます。また、運動後にも柔軟体操をすることによって、疲れが溜まってしまうことや筋肉痛も予防できます。特にジョギングなどといった負荷のかかる運動を急に止めてしまうと身体に負担がかかり、貧血になってしまうことも考えられるため注意が必要です。
ジョギングをするときには、終わりごろには徐々にスピードを緩めて最後はゆっくり歩くような速度でクールダウンできる時間を作ると身体の負担を軽減できます。

運動ができない場合がありますので、医師の指示に従ってください

糖尿病には適切な運動が良い影響をもたらすため推奨されています。ただし、必ずしも糖尿病になったら運動をしなければならないというわけではなく、しない方が良い場合もあるので気をつけましょう。以下に該当する方は、運動をするかどうかを医師とご相談ください。

  • 運動で脱水症状になった経験がある方
  • 自律神経障害が進行中の方
  • 腎臓疾患が進行中の方
  • 空腹時血糖が250mgdL以上の方
  • 感染症にかかっている方
  • 足に潰瘍や壊疽がある方
  • 関節や骨にケガ・病気がある方
  • 網膜症が進行中の方
  • 心筋梗塞など重篤な心臓疾患を患っている方
  • 肺疾患を患っている方

日常生活の身体活動量を増やそう

運動をしなければならないとなると、わざわざ時間を作ってそれなりに体に負荷のかかる動きをしなければならないと思う方もいるでしょう。しかし、掃除や洗濯のために家の中を移動することや、買い物のためにバス停まで歩くことや通勤で歩くだけでも十分な運動と言えます。
運動は、日常生活の中で体を動かすことや、アウトドアなどを楽しむことも含まれます。あえてスポーツばかりにこだわるのではなく、体を動かす趣味を見つける、空き時間にストレッチをするなどなるべく自分自身が楽しめるような、負担のかからない方法で運動をすることも大切です。

  • デスクワークの休憩のタイミングでストレッチする
  • エスカレーターやエレベーターではなく階段を利用する
  • 通販での買い物を控えて買い物に行く
  • 通勤時に一駅前で降りて歩く
  • 普段から散歩する
  • 旅行先でバスやタクシーを利用せずに歩いて回る
  • 身体を動かす趣味を探す(ハイキングやバードウォッチング、登山など)
  • 洗濯や掃除などに積極的に参加する