胃カメラでわかる胃の病気
急性胃炎
発症原因は、主にアルコールの過剰摂取であり、他に痛み止めや抗菌薬など薬の服用、ストレスなどがあります。こうした要因があってみぞおちの痛みといった胃炎の症状が起きた場合に急性胃炎が疑われます。内視鏡検査で粘膜の状態を確かめ、結果に従って適切な治療を行うことで症状は速やかに改善できます。
慢性胃炎
ピロリ菌感染などがあって胃粘膜に慢性的な炎症がある状態です。慢性胃炎があると粘膜のびらん、胃や十二指腸の潰瘍を繰り返して胃の痛みが継続的に起こります。進行すると胃粘膜が萎縮する萎縮性胃炎を起こすことがありますが、これにはピロリ菌感染との関連が証明されています。萎縮性胃炎は高分化型腺がんという胃がん発症リスクがとても高い状態です。胃がんの方のほとんどにピロリ菌感染が認められていますが、ピロリ菌に感染していても除菌治療でピロリ菌を除去することが可能です。ピロリ菌が除去されると胃粘膜の状態が改善し、炎症の再発リスクが大幅に低下します。ピロリ菌感染の有無を調べる検査や除菌治療は健康保険適用で受けることができます。ただし、その場合は内視鏡検査を受けて慢性胃炎と診断されることなどの条件があります。内視鏡検査時には粘膜の観察に加えて組織の採取ができますので、そこで採取した組織を調べてピロリ菌感染の有無を確かめます。この検査で陽性とされたら除菌治療が可能です。
なお、内視鏡検査をせずにピロリ菌感染検査や除菌治療を行うことも可能ですが、自費診療になります。当院では、より幅広い方がお気軽に検査や除菌治療を受けられるよう、自費診療の感染検査や除菌治療もリーズナブルに提供しています。
胃がんは早期発見と治療で完治可能ですが、進行させてしまうと負担が大きい治療が必要になってしまいます。ご不安があればお気軽にご相談ください。
胃潰瘍
胃粘膜が深く傷付いた状態で、原因にはピロリ菌感染による慢性的な炎症、アルコールの過剰摂取、痛み止めや抗菌薬の内服などがあります。出血が少ない場合には抗潰瘍薬で効果的な治療が可能です。ピロリ菌感染がある場合には、除菌治療に成功することで潰瘍や炎症の再発を抑えることができます。潰瘍や炎症を長期間続けてしまうと胃がんリスクが高くなってしまうため、早めに消化器科を受診してしっかり治すようにしてください。
胃ポリープ
胃にできるポリープは、胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、炎症性ポリープ、腫瘍性ポリープなどがあり、このうち腫瘍性のポリープは発見したらすぐに切除が必要です。それ以外のポリープはがん化することがまれですから、定期的な経過観察を行います。また、胃底腺ポリープに関してはピロリ菌感染のない健康な胃粘膜にできやすいものですからリスクはかなり低く、切除だけでなく経過観察も必要としないことがあります。過形成性ポリープと炎症性ポリープでは、経過観察中にサイズが明らかに大きくなっていることがわかった時点で、出血やそれによる貧血を起こす可能性があれば切除を検討します。こうしたポリープの種類に関しては内視鏡検査中に組織を採取して、生検により確定診断します。
胃がん
胃がんのほとんどはピロリ菌感染による慢性胃炎が進行して発生しています。日本では胃がんの発症数や死亡者数が昔からかなり多かったことから研究が進んでいて、定期的な内視鏡検査により早期発見できれば完治も可能な病気になっています。特に浅い早期胃がんの場合は、広範囲のものでも内視鏡による切除が可能ですから、お体や日常生活にほとんど負担なく治療が可能です。ピロリ菌感染陽性の方と、以前陽性で除菌治療を受けた方、胃がんの家族歴がある方、慢性胃炎がある方は、胃がんリスクが高いため定期的な内視鏡検査が不可欠です。
ピロリ菌感染
ピロリ菌に感染するのは主に幼少期であり成人してからの感染はないと考えられています。幼少期は免疫力や胃酸がまだ弱いため、汚染された井戸水などを介して感染が起こるとされています。感染したピロリ菌はアルカリ性の分泌物で強酸の環境を中和して胃に住み着きます。ピロリ菌は毒素を分泌するため、胃に慢性的な炎症を起こし、慢性胃炎がゆっくりと進行して萎縮性胃炎になり、胃がんが発生すると考えられています。ピロリ菌は除菌治療で除去することができ、除菌治療に成功すると炎症の再発を効果的に防ぐことができます。そのため、ピロリ菌感染がわかったら胃炎を進行させないようできるだけ早く除菌治療を受けることが重要です。ピロリ菌は環境からだけでなく、人から人への感染があるとされているため、早期に除菌治療を受けることで次世代への感染予防にもつながります。
なお、ピロリ菌の感染検査と除菌治療は健康保険適用で受けることができます。内視鏡検査によって慢性胃炎の診断を受けることなど、保険診療にはいくつか条件があります。当院では、痛みや苦痛なく楽に受けていただける胃内視鏡検査を行っており、保険診療に関するご質問にもわかりやすくお答えしていますのでご相談ください。
胃カメラでわかる食道の病気
逆流性食道炎
食道粘膜には胃液から粘膜を守る機能がないため、胃から胃液やそれを含むものが逆流してくると炎症を起こします。逆流を繰り返して炎症を起こしている状態が逆流性食道炎です。胸焼け、酸味や苦みのあるものがゲップと共に上がってくる呑酸などが逆流性食道炎の主な症状です。胸の痛みや咳など心疾患と似た症状を起こすこともあります。効果的に症状を抑える薬剤がありますが、再発しやすいため症状が治まっても炎症が解消するまでしっかり治療を続けることが重要です。また、逆流性食道炎は、食生活や腹部を締め付ける衣類、猫背などの姿勢といった生活習慣で起こりやすくなる病気ですから、再発を防ぐためには生活習慣の改善も重要になります。食道は炎症を繰り返すとバレット食道を発症し、そうなると食道がんに移行する可能性が高くなってしまいます。食道がんは進行が早い傾向があり、転移リスクも高いため特に早期発見な重要ながんです。逆流性食道炎がある場合には定期的な検査を受けましょう。
バレット食道
逆流性食道炎による食道粘膜の炎症を繰り返すと、食道粘膜の扁平上皮が胃粘膜に似た腺上皮に変化してしまいます。これがバレット食道です。バレット食道は腺がんである食道がんの発生リスクがとても高い状態です。欧米の食道がんのほとんどは、逆流性食道炎からバレット食道になり、そこから発生したものです。日本でも食生活が欧米化してきた近年、逆流性食道炎が増加傾向にあるため、バレット食道は特に注意が必要です。逆流性食道炎を繰り返している場合、バレット食道と診断された場合には、定期的な内視鏡検査を必ず受けるようにしてください。
食道がん
発見のきっかけになる症状では、胸焼け、みぞおちや胸周辺の違和感、飲み込みにくさ、つかえなどがあります。食道がんには判明しているリスクファクターがあり、高濃度アルコールの摂取、喫煙経験がある場合には定期的な検査が不可欠です。食道がんも早期発見できれば内視鏡による切除が可能です、進行させてしまうと難度の高い外科手術が必要になってしまうため、少しでも違和感があるようでしたら早めにいらしてください。
胃カメラ検査でわかる「のど」の病気
食道より上の部分は咽頭と呼ばれており、鼻の奥にある空気の通り道である上咽頭、口の奥にあって空気と飲食物が通る中咽頭、その下にあって食べ物を食道に運ぶ下咽頭があります。咽頭扁桃や口蓋扁桃、舌根、口蓋垂などは上咽頭に含まれます。喉頭がんはできた場所によって上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分けられます。咽頭がんも早期発見により内視鏡的な切除で完治可能な病気です。進行させてしまうと難度の高い外科手術や放射線治療が必要になってお体への負担が大きく、発声や食事に支障が出てしまう可能性もあります。当院では胃カメラ検査の際に咽頭粘膜の観察もしっかり行っており、早期発見に努めています。
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