大腸カメラ検査でわかる大腸の病気
大腸がん
日本人のがん罹患数1位は、胃がんです。そして、大腸がんが2位となっています。
死亡数は大腸がんが2位、胃がんが3位で、大腸がんの死亡数は増加傾向にあります。
ただし、大腸がんの早期発見による生存率は96.6%と大変高くなっています。ところが、発見が遅れたためにリンパ節などに転移してしまった場合の大腸がんの生存率は、72.1%、さらに他の臓器に転移してしまったときは、15.8%と低くなっていきます。このことからも、早期発見・早期治療がいかに重要かがわかります。
ほとんどの大腸がんは大腸ポリープから発生します。そのため、大腸カメラ検査時に前がん病変の大腸ポリープを発見した際に、その場で切除することは将来の大腸がん予防につながります。早期の大腸がんや大腸ポリープには自覚症状を起こすことがほとんどないため、確実に発見するためには定期的な内視鏡検査が不可欠です。一般的な大腸がん検診では便潜血検査が行われていますが、この検査で早期大腸がんや大腸ポリープが発見されることはまれにしかなく、逆に進行した大腸がんを見落としてしまうこともあり、確実性に乏しい検査です。便潜血検査が陰性でも大腸がんリスクが上昇しはじめる40歳を超えたら、大腸カメラ検査をおすすめしています。
進行大腸がん
大腸がんは、ほとんどが粘膜表面近くで発生し、進行すると増殖して粘膜の奥にも広がって、やがてリンパ節や大腸以外の臓器へ転移します。進行させてしまうとお体への負担が大きい治療が必要になって、日常生活にも支障が生じますし、死亡リスクも高くなってしまいます。できるだけ早い治療が有効ですから、血便など便通に関する症状、便潜血検査陽性などがありましたらすぐに消化器科を受診してください。
大腸ポリープ
大腸ポリープは大腸粘膜にできた腫瘍で、いくつかの種類に分けられます。そのうち大腸がんを発生させる可能性が高いのが腺腫の大腸ポリープです。そのため腺腫の大腸ポリープが大きくならないうちに切除することは将来の大腸がん予防になります。当院では大腸カメラ検査時に発見したポリープをその場で切除する日帰り手術を行っています。検査と治療予防が1度にできてしまうため、後日改めて切除のスケジュールを作る必要がなく、前日の食事制限なども1度ですみます。
大腸憩室症
憩室はポケット状のくぼみのことで、大腸憩室症は大腸粘膜に憩室ができている状態です。憩室ができているだけの場合には特に症状がありませんが、炎症や出血を起こすことがあります。憩室は自然になくなるものではないため、発見されたら定期的に経過観察を受けて問題がないかを確認する必要があります。食生活、便通などが発生にかかわっているとされていて、体質的に憩室ができやすいケースもあります。
潰瘍性大腸炎
大腸にびらんや潰瘍といった慢性的な炎症を起こす病気です。主な初期症状に、下痢、血便、腹痛などがあり、症状が現れる活動期(再燃期)と症状がなくなる寛解期を繰り返します。寛解期に治ったと勘違いして治療を中断してしまうと重い再燃期を起こしてしまうため慎重なコントロールを続ける必要があります。原因がまだはっきりわかっていないため難病指定されていますが、炎症を抑える治療により発症前の状態に近い生活を送ることが可能です。
直腸カルチノイド
直腸にできる腫瘍で、リンパ節、肝臓への転移を起こす可能性があるため警戒が必要な病気です。大腸がんと同様に、大腸カメラ検査による早期発見と切除が可能です。
直腸潰瘍
直腸の肛門近く、下部にできる潰瘍です。直腸は粘膜ですから知覚神経がなく、潰瘍ができても出血するまで気付かないことが多くなっています。主な症状は出血による血便、大量出血による貧血などです。発症は高齢者や栄養の不足している方に多いのですが、原因はまだよくわかっていません。
大腸脂肪腫
脂肪のかたまりで構成された腫瘍です。サイズが小さければ問題ありませんが、狭窄や閉塞を起こすほど大きくなると便の通過が滞り、腸閉塞など危険な状態になる可能性があるため定期的な大腸カメラによる観察が不可欠です。
大腸メラノーシス
一部の大腸粘膜に色素沈着が起きています。原因となっているのは主に便秘薬で、センナや大黄が含まれているものを常用しているケースがほとんどを占めます。大腸メラノーシス自体の症状はありませんが、便秘薬の常用で便秘が深刻になっているケースが多くなっています。そのため、大腸カメラ検査で色素沈着を確認した場合、便通についてうかがって便秘がある場合には適切な治療計画をご提案し、生活習慣の改善などについて専門的なアドバイスを行っています。
過敏性腸症候群
過敏症腸症候群というと、急激な腹痛と激しい下痢というイメージがあると思いますが、便秘を起こすタイプ、下痢と便秘を繰り返すタイプ、膨満感が強く出るタイプもあります。緊張などのストレスをきっかけに症状を起こすことが多いため体質や気持ちの問題だと誤解されている方が多いのですが、過敏性腸症候群は消化器専門医による適切な治療で症状の大幅な改善が見込める病気です。通勤通学、会議、面接、試験などストレスのかかる場面で症状を起こしやすい傾向があるため、過敏性腸症候群を放置しているとQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下につながります。
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